Claudio Monteverdi オペラ「ポッペアの戴冠」
日本語訳詞 by桂木農
※一部をサンプルとして掲載します。
第一幕 第1場
オットーネ 今ここに、今帰った、この歓びよ。愛しい我が家、愛しい我が妻よ。
一筋の光も無い闇の中、ああ、そなたが灯火となる。
今ここに帰った、この歓びよ。
開けておくれよ、ポッペーア、どうかどうか。
麗しきその眼差しを、見せておくれよ。
朝日の輝き、我が女神よ。
夢見る翼、我が想いを、空を飛び、届けておくれ。
今すぐ、どうか、我が胸の想いを。
≫≫≫≫≫ 中略 ≫≫≫≫≫
第3場
ポッペーア いや、残って、もう少し。
まだ、この胸の高鳴る内に、貴方の温もりを奪わないで。
ネロ ポッペーア、放してくれ。
ポッペーア お待ち、お待ちになって、もう少し。
朝日が射せば、私には昼間の終わり、
私の光、貴方こそが日の光。
でも貴方は行く。駄目、駄目、駄目と言っても。
ねえ、どうか暫し。
帰るという一言で、ああ、気が、ああ、気が遠くなる。
ネロ 間もなく二人の仲を、国中の皆が知ってしまう前に、
あのオッターヴィアを・・・
ポッペーア まさか、まさか・・・
ネロ あのオッターヴィアを追い出せば・・・
ポッペーア 追い出せば、追い出せば・・・
ネロ あのオッターヴィアを追い出せば、そなたのもの。
(二人、恍惚として)
運命に任せてみよ。運命に任せてみよ。任せてみよ。
一節歌おう、吐息に寄せて。
一節歌おう、歌おう、吐息に寄せて。
接吻けのその甘さ、別れ難さ。
すぐにも会えようぞ、すぐにも。
すぐにも会える、愛し子よ。すぐにも会える、愛し子よ。
≫≫≫≫≫ 中略 ≫≫≫≫≫
ネロ 遂に予は決めた。おお、セネカ、セネカ。
面倒なオッターヴィアと離縁して、
妻には、妻には、妻にはポッペーア!
セネカ 陛下、甘い誘いに乗れば、後で苦い思いをすると。
今は情に流されて、分別さえ失っておると。
ネロ 分別など! 思うがまま、好きなようにするわ。
セネカ 好きなようにすれば、嫌われるばかりですぞ。
ネロ 人の陰口など知らぬ。
セネカ 知らぬが仏、恥をかく。
ネロ その舌を引き抜いてやろうか。
セネカ 舌が無くとも目が語る。
ネロ オッターヴィア、あやつは子が出来ぬ。
セネカ 愛しもせずに、出来はせぬ。
ネロ 力こそが、力こそが正義なり!
セネカ 力だけで裁けない!
ネロ 戦に勝てばよい!
セネカ 血を流してはならぬ!
ネロ 理屈は後からつける。
セネカ 理屈無き正義などありはしない!
ネロ つ、つまりは予に逆らうのか!
赦せぬ、赦せぬ、赦せぬ、赦せぬ!
何と言おうと、予が決めたのだ。
そなたにも民にも曲げられはせぬぞ。
国を傾け、必ず叶えてみせる。
そうだ、そうだ、そうだ、ポッペーア、
我が妻に! 我が妻に! 我が妻に!
≫≫≫≫≫ 中略 ≫≫≫≫≫
オッターヴィア さあ、下僕として、この私に義理を感じる気持ちがあれば、
逆らわず、拒まず、従うことよ。
良いか、良いか。血を見るまでは、復讐の決意を!
にっくきは、あのポッペーア。
そなたには、そなたには、それが出来る!
オットーネ 復讐を、復讐を、誰にと?
オッターヴィア ポッペーア!
オットーネ ポッペーア、ポッペーア、まさかポッペーア。
何故、何故、神よ。人の心を玩ぶようなお定めを。
オッターヴィア さ、さ、さ、直ぐにも。
オットーネ 従わねばと?むごい運命に。
オッターヴィア ぐずぐず何を云っておるか。
命が、命が惜しくはないか。
オットーネ もしも、バレたら・・・
オッターヴィア 万事、抜け目無く、女の服をまとうのだ。
偽りの姿で敵の目を欺けばよい。
出来ぬとあらば、出来ぬとあらば、
出来るように仕向けてやるわ。
訴えてやるわ、そちの無礼を。
直ちに直ぐに、そなたか、ポッペーアめか、
どちらが死ぬか、どちらか選ぶのよ!
オットーネ お后様、仰るまま、直ぐにも。
何故、何故、神よ。人の心を玩ぶようなお定めを。
≫≫≫≫≫ 中略 ≫≫≫≫≫
ポッペーア 疎ましき日はもう終わりよ。もう終わり。
愛おしき貴方をずっと我がものにできるとは。
ネロ 今こそ世界は意のままに。
ポッペーア もう、離さない!
ネロ 今、二人は一つだと。
ポッペーア ┏誰でもない貴方に、 愛を 捧げたもの。
ネロ ┗ そなたに、我が 愛を もう、
ポッペーア ┏我がいのち、 抜けがらよ。
ネロ ┗ 捧げたのだ。我が命と愛の全てを。抜け殻だ、
ポッペーア ┏ 抜け殻よ、貴方に捧げ。愛の全てを捧げ。
ネロ ┗そなたが故に。 もう、 愛の全てを捧げ。
ポッペーア ┏ 二度とはもう離さないと。
ネロ ┗二度と離さぬ。二度とはもう離さないと。
≫≫≫≫≫ 以下略
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